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貯水槽の満水、減水を検出する、電極棒の仕組みについて
コンテンツ
水位電極について
給水ポンプでは水槽内の水位を主に下記の方式で検知しています。
- 電極棒方式
- 電極帯方式
- センサー方式
- フロートスイッチ方式
本コラムでは電極棒方式について解説します。
電極棒のそれぞれの役割
水位電極は安価で故障しにくく安定した運用が可能です。水槽には主に3~5本の方式が利用されています。
受水槽での電極5本の場合
電極棒は長いほうから アースコモン、渇水、減水、復帰、満水 という構成です。※メーカーによりそれぞれの名称が異なる場合があります。
- 満水
- 水位がこれを上回ると満水警報が鳴ります。下回ると満水警報は解除されます
- 復帰
- 渇水後、水位がこれを上回るとポンプが起動します。渇水警報が消えます
- 減水
- 水位がこれを下回ると減水警報が鳴ります
- 渇水
- 水位がこれを下回ると空転防止によりポンプが停止。渇水警報がなります。
通常水位は満水警報より低く、その他の電極棒より高ければ正常です。
高置水槽での電極5本の場合
電極棒は長いほうから アースコモン 減水 起動 停止 満水 という構成です。
- 満水
- 水位がこれを上回ると満水警報が鳴ります。下回ると満水警報は解除されます
- 停止
- ポンプが起動時にこれを上回ると停止します。
- 起動
- これを下回ると受水槽の揚水ポンプが起動し水槽に給水されます。
- 減水
- 水位がこれを下回ると減水警報が鳴ります
通常水位は停止より低く、起動より高ければ正常です。
電極4本の場合
5本の場合と比べると、減水と渇水の機能を共有しています。受水槽に多い方式です。減水を下回ると警報が鳴りポンプの空転防止の為ポンプが止まります。復帰の電極に触るまで水が溜まらないと警報と空転防止が解除されません。
電極3本の場合
電極棒は長いほうから アースコモン 減水 満水 という構成です。減水に関しては、水位を上回ると即時復旧するタイプと、数分経過後に復旧するタイプがあります。消火栓水槽などに多い方式です。
電極の仕組み
電極のアースとその他の電極棒が水で導通する(水の中を電気が通る)ことにより、フロートレスリレーに電流が流れ検知します。
フロートレスリレーからアースとその他の電極棒の間に電圧がかかっています。OMRON:61F-Gシリーズの場合、8Vと微弱ですので大丈夫ですが、リレーの種類によっては電極に触るとちょとだけビリっとくるものもあります。
フロートレスリレー
単体の制御盤の場合、オムロン61F-Gシリーズ、パナソニックAF2142などが使用されています。給水ポンプユニットの場合は、制御盤の基板で検知しています。
参考写真 オムロン フロートなしスイッチ 61F-G
写真上段左より:61F-G3 61F-G4
写真下段左寄り:61F-G2 61F-G1 61F-G 61F-11
不具合対処
異常がない電極座
良くある不具合としては、電極座の腐食があります。ねじが腐食し、枯葉なども入ってしまっています。湿度が高い場所や屋外で雨水が浸水することにより、ねじが錆たり、水が溜まったりして異常が起きます。大抵の場合は導通してしまうことによる満水警報の発報、断線による減水警報のどちらかです。
受水槽 満水警報の場合の対処
下記のような対処を行います。
- 水槽内を覗いて水があふれていないか確認。あふれると水槽外のオーバーフロー管から水が流れています。水があふれている場合は、ボールタップや定水位弁の不具合ですのでその対処が必要です。
- 水槽内が問題ない場合は水位検出の不具合が考えられます。アースと電極棒(満水)が腐食などにより導通する不具合の場合、その満水の端子を探しだし、線を抜けばひとまず警報を消すことが可能です。
受水槽 減水警報の場合の対処
- 水槽内を覗いて水が少なくなっている場合、ボールタップから補給水が入っている場合は、復帰の電極まで水位が回復するのを待ちます。補給水が無い場合は、ボールタップや定水位弁の不具合ですのでその対処が必要です。
- 水槽に水が溜まっている場合は水位検出の不具合が考えられます。アースと電極棒(減水)が導通しないことによる不具合の場合、アースと減水の端子を線で結ぶ(現場ではワニ口のクリップが両端についたもので端子同士を挟みます)ことにより警報を消すことが可能です。
減水、渇水警報の場合はポンプが停止します。
減水、渇水警報の場合はポンプが空転しないよう、ポンプが動かなくなります。通常であれば、水槽内の水が溜まり、アースと電極棒(復帰)が導通することによりポンプが動き出します。水が復帰までしばらくは水がでません。復帰が無い場合は、少し溜まってはポンプが動き、給水し、水が減るとすぐ減水警報でポンプが止まり、を繰り返し、ポンプの故障となるため、このようなことにならないような仕組みとなっています。
小さな受水槽(1t程度)では電極棒を設置していない現場も多く見られます。通常時は問題ありませんが、満水や減水になったときに、警報を鳴らしたり、ポンプが空転しないよう停止させることができませんので、改修工事などのときに設置されているか?腐食などの不具合がないか?確認が必要です。
※追記 2015/01/08 高置水槽の不具合での対処を追記しました。
高置水槽 減水警報の場合の対処
- 水槽内を覗いて水が少なくなっている場合は、制御盤もしくはポンプの不具合です。
ポンプが運転中か確認します。運転しっぱなしの場合はポンプの不具合です。空転している(逆止弁の不具合により吸上げられない、逆流してしまう、エアーを噛んでいる)可能性があります。
停止させ運転中側のポンプの入りと出のバルブを締め、もう片側のポンプの単独自動運転として応急処置とします。 - ポンプが停止していた場合にポンプ故障警報が出ていた場合はモーターもしくはマグネットスイッチの不具合です。上記と同じ様にもう片側のポンプで運転をかけてみます。
- ポンプが停止していた場合は、制御盤の不具合が考えられます。
直近で雷などがあった場合は、盤内のヒューズ切れやブレーカーが落ちていないか電気がきているか?確認します。
一通り確認しヒューズなどを交換した後、誤動作している場合もありますので一度ブレーカーを落として再度投入し再起動をこころみます。 - 上記でも動かない場合はその他、フロートレスリレーや基板が焼損して入る場合もあります。
自動で動かない場合は手動で運転をかけてみます。それでも動かない場合は制御リレーや基板を交換するしかありません。 - 水が入っている場合は、電極配線が断線しているか、フロートレススイッチの故障が考えられます。減水端子を
アースコモンと短絡するなど応急対応とします。
高置水槽 満水警報の場合の対処
- 水槽内を覗いてあふれていないようであれば、ほとんどの場合は電極部に水がたまり漏電していることが多いです。満水の端子を切り離して応急処置とします。
まとめ
ひとつの部品に原因を追究し絞るのは時間も費用もかかります。常日頃見ている現場ですらそうなりますので、非常時に呼ばれて初めて行った場合には時間がかかってしまうのはいたし方がないでしょう。予防保全も含め設備機器はある程度まとめて交換してしまうほうが時間がかからず安心できます。作業員としてはオーナー様のことを思いつい原因追求し安く修理してあげたい気持ちになりがちですので、オーナー側からリニューアルの話をだしたほうが良いと思います。
20年以上経過しているようであれば、費用はかかりますが、やはり制御盤を入れ替えたほうが安心して運用できます。入れ替えができないようであれば時間や手間ひま断水や警報の発報がでてしまうのはいたし方がないかと思います。
※追記 20160512
電極棒のアース(コモン)に関しては本来のアースではなく、その他の電極棒の共通の棒となっていることからコモン(日本語訳:共通、表記:common、略:com)と呼ばれます。本来のアースとは異なりますのでアース線に繋がないようにしてください。またアース電極棒は落雷回避とも関係がありません。
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